地球に暮らす日々

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現代中国の様々な問題を示唆する映画 「最愛の子」

      2018/02/05


さらわれた子供の両親と、さらわれた子供だと知らずに育てていた母親の葛藤を描く物語です。それぞれの親が子を思うシーンに、泣けます。

中国で暮らしていたころ、一人っ子政策のゆがみにより、都市で、子供や若い女性がさらわれる話をよく聞きました。

農村では、跡継ぎとして男の子が望まれるため、女の子が生まれたら、捨てるか、生まれる前に女の子だとわかったら、堕胎してしまう家が多く、結果、男女比の人口バランスが崩れてしまっていることも。

さらわれた男の子は、農村に跡継ぎとして、高値で売られるそうです。そして、さらわれた女性は、農村の嫁の来てのない男性のもとに、売られるとのことです。

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実話をもとに制作された映画です

レンタルDVD屋さんで、主演女優ヴィッキー・チャオが写ったDVDのパッケージが、気になって手にとってみました。ストーリーを読むと、以前、YouTubeで見た動画と似た内容でした。実話をもとに、制作された映画だそうです。

実話の内容はというと、

ある男性が、地方から、大都市のシンセン市に出てきて、一生懸命、商売に励んでいたが、突然、3歳の息子がさらわれてしまう。

警察に連絡しても、まったくあてにならず、男性は、自費で懸賞金をかけ、ネットに情報を載せたり、路上でチラシを配ったりと、絶対に見つけてやるという執念で、あちこち探し回る。3年が過ぎたころ、息子さんではないか、という連絡があり、江蘇省の農村へ行ってみたところ、見つかったというもの。

その子は、その家の子供として大切に育てられていた。夫のほうは、すでに病気で死亡。妻は、さらわれた子供ということを知らず、夫がシンセンの女性に産ませた子供だ、という話を信じていた。

映画は、実話より、かなりドロドロしていました

実話では、子供が父親を覚えていたし、育ての母のほうも、あっさり子供を引き渡し、実の両親ともいい関係になりました。育ての母には、実子の女の子がいたし。

最愛の子(字幕版)
しかし、映画では、さらわれた子供が実の両親のことを、まったく覚えておらず、育ての母のもとに帰りたがるし、さらに育ての母が、なんとか子供に会おうと、シンセンに乗り込んでくる、という困った展開に。

これ以上ネタバレしない範囲での感想

ヴィッキー・チャオ(趙薇)の演技がうまい

純朴な農村女性の話し方が上手でした。元の話では、江蘇省の女性のはずなのに、映画では、安徽省になっちゃったのは、彼女が安徽省出身で、ここの方言が話せたから?

ノーメークで出演したそうです。お顔のシミに、リアリティがありました。

離婚が多い

中国語の先生に教えてもらったのですが、中国では、久しぶりに会った友達に、「もう離婚した?」と聞くのが、流行っているんだそうです。

物質的に豊かだったら幸せか

子供のためを思うと、都市で、お金持ちの家に育てられた方が幸せだと思われがちですが、物質的に豊かでない農村でも、親子兄弟、仲良く暮らすのが一番の幸せなのでは?と思いました。

シンセン市の背景がなつかしい

シンセン市は、中国広東省にある経済特区で、香港と国境沿いにある町です。

私は、シンセンとその周辺の都市に、約12年住んでいました。とりわけ、よく通ったシンセン駅前がなつかしかったです。

しかし、ヴィッキー・チャオの動きを見ていると、シンセン駅で降りて、シンセン市内に向かうはずなのに、背景の建物の位置を見ていると、ときどき香港方面へ歩いて行ったりして、??と思うことも。もと、居住民としては、気になりました。それとも、道に迷っているのだと伝えたかっただけ?

暫住証(ざんじゅうじょう)という響きがなつかしい

ほかの地方の住民、とりわけ、農村部の人は、自由にシンセン市に住めるわけではありません。仕事がある人のみに、会社がスポンサーとなって、期限付きで、居住権があたえられます。

また、暫住証を得るには、健康診断で、身体に異常がないことを証明しなければなりません。もう、外国人の労働ビザと、ほぼ同じ扱いです。同じ国の国民なのに、こういう扱い、不思議ですよね。

都市では、農民や低学歴者が馬鹿にされる

中国の人口13億のうち、10億人は、農民だというのに、都市の人の農民に対する扱いは、ひどいですねえ。あんたなんか、まともに相手にしませんよー、という感じ。

警察が、ヴィッキー・チャオが演じる農村女性を取り調べるときも、職業の次に、学歴を聞くところも、ああ、中国だなあ、と思いました。ちなみに、中国語で、学歴を「文化程度」と言います。日本語的には、学歴と文化程度は、必ずしも比例しませんが、中国では直結するとみなされ、低学歴=レベル低い人間、として扱われます。あああ。

農村の男尊女卑が強烈

夫がシンセンの女性に産ませたという子供を、「はい、そうですか。」とあっさり育てるところも、凄いですねえ。「夫の裏切りを許せない」、とはならないんですね。いまだに、続く農村の男尊女卑。

子供をさらってくるくらい非道な夫なので、ヴィッキー・チャオが演じる農村女性は、不妊症だからと、離婚されてしまいそうなものですが、夫がそうしなかったのには、理由があります。それが、明らかになる、驚きのラスト、となります。

2017年10月に旅行でシンセンに行きました。こちらの記事もよろしかったら、どうぞ。
香港から電車で、懐かしの中国広東省シンセン市羅湖地区へ






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